有終の

ある1日

2020.12.09(Wed)

 

コトン・・・・コトン・・・

耳をすませば、聞こえてくる

ペレットがひとつずつ炎の中に落ちる音。

 

竣工したお家でストーブの点火式があった。

特別な儀式があったわけではないが、

ストーブ屋さんにとって、

届けたストーブに初めて火が入る大事な日らしく

「点火式」と呼んでいるらしい。

 

メンテナンスなど一通りレクチャーを受けた後、

ご主人が点火する。

ペレットが炎に落ちる様を見て

「小人さんがひとつずつ運んでいるみたい」

奥様の一言に一同うなずき、炎を眺める。

 

昔の小学生のように手をかざしたり、

少し離れて、暖かさが伝わってくる範囲を確認したり

風量調節をして炎の大きさを試し、

煙突から出る煙の臭いや色を確認する等

ご夫婦の楽しそうな光景を少し遠目に眺めていると、

コトン・・・コトン・・・と心地いい音が、また聞こえてきた。

 

その時、僕は確信した。

 

この家の最後のピースが埋まったと

そしていよいよ始まる

今年の冬も、施主の新しい暮らしも

 

 

 

 

 

#佐野泰彦建築研究所