my hometown 敷地編(3)

はじめての家づくり

2021.03.11(Thu)

 

前回の打ち合わせから2か月ほどたったある日

「良い土地が見つかって、是非一緒に見に来てほしい」と奥様からメールを頂いた。

メールには、気になっていた物件の条件が外れたと書いてあった。

詳しいことは書かれていなかったけど、

もしそれがあそこなら全てがきっと上手くいくと思った。

 

打ち合わせ30分前に僕は予想した分譲地に到着し、一人眺めた。

道路沿いに建てられた区画の看板を見ると

契約済のマークが付いていない区画がいくつかあり、

お目当ての敷地が残っているか確認した。

南向きもあったし、北向きもあった。僕の中では即決だった。

この分譲地であればと祈るように期待した。

 

その日はご夫婦と僕の3人で廻った。

子供たちは少し飽きてきたのか「決まったら教えて・・」といった感じだった。

 

1軒目で案内された敷地は、先ほど眺めていた分譲地だった。

内容を教えてもらった中から「ここしかないです。これです。」

僕が指差したのは北東の角地だった。

すると「そうですよね、僕たちもここがいいと思っていたんです。」とご主人は言った。

 

 

お互いの意見が一致した時、言葉にならない言葉を読んだような気がした。

それは、心のより深いところからの本当の望みの声を聞いたような瞬間だった。

 

 

南向き、南東角地といったもともとの要望とは大きく異なるけれど、迷いはなかった。

ご家族がご家族らしく日々の暮らしを過ごし

巣立った子供たちがふと思いだし、帰りたくなる実家にふさわしい敷地だった。

内なる興奮を抑えながら、他の候補地も見て廻った。

南向きで東側に公園がある敷地も良かったけれど、

公園で遊ぶ子供たちの声や視線が気になったことをお伝えした。

 

ご自宅に戻り、珈琲を頂きながらその日を振り返ったが

やはりあの土地しかないと結論に至った。

そしてどれぐらいの建物が建つのか具体的に検討する事になった。

敷地選びのアドバイスするにあたり、

現在の暮らし方や新しい家でやってみたいこともお聞きしていたので、

イメージはすでに共有出来ていた。

 

 

帰る時、もう一度分譲地に立ち寄り眺めた。

 

この土地は、この良さがわかるまで

ご家族をじーっと待っていてくれたんじゃないかと思った。

そしていろんな角度から何枚も何枚も写真を撮った。

ご家族が探し出したダイヤの原石のような大地を。

 

 

2日後

「売れてしまってはいけないので、土地の申し込みをしました!」

と奥様からメールを頂いた。

初めてお会いしてから7か月が過ぎた風薫る5月の事だった。

 

 

 

 

 

#佐野泰彦建築研究所

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