過ぎたるは猶及ばざるが如し(後編)
京町家リノベーション2020.12.14(Mon)
(前回の続きです)
何事もなかったかのように覆い隠すというよりも
いつの間にか溜まった生活感を落し、本来ある魅力に磨きをかける。
しかしながら建築当時に囚われすぎると前者と変わりはありません。
悲しみの縁から新たな一歩を踏み出すには
現代の生活や施主好みに必要と思われる要素を
適度に取り入れた中庸的な姿勢こそが大事だと考えました。
ご希望通りに出来ない事に罪悪感を感じ、一度お断りしましたが
施主もご納得頂き、計画を進めました。
透明度の高い北面の光がより反射拡散し
清潔感のある凛とした空気感を創るべく
窓や出入り口上部に設けられていた奥行30センチほどの棚を撤去しました。
壁面は上塗を落し、下地の土壁を修繕した後
きめの細かい珪藻土で施主好みの色を上塗しました。
天井と木部は洗い、
床は床組をやりかえ、断熱材を充填しました。
仕上げ材は縁なしとし、畳で畳の目の方向を交互に変え、
少し現代的な雰囲気を醸し出しています。
また床高が高く、出入りしにくいとお聞きしたので、
足触りの良さそうな吉野杉で式台を設けました。
踏み面は杢目の美しさと時を刻みながら少しずつ変わっていく様を
楽しんで頂けるよう無色で仕上げました。
竣工時、お施主様は満足なご様子でしたが
本当にこれで良かったのかと自問することもありました。
その後、茶話会等に少しずつご利用いただき
来られたお友達に建物の見どころを説明されている様子を
風の便りにお聞きし、ようやく安堵しました。