あかるいほうへ (後編)

セカンドライフ

2021.07.15(Thu)

(前回の続きです)

竣工日は、バタバタだった。

残作業に行き来する職人さん達のタイミングを計りながら、写真を撮った。

構図を考える暇もなく、とにかくたくさん撮っておけば

あとでなんとかなるだろうといった具合だった。

 

その後、工事のために2階に上げた荷物などを

みんなで手分けして運んだ。

明日から治療が始まるのに、洋室のベッドは後日に届くとのことだった。

工事完了の日程が寸前まで読めず、

ベッドの発注のタイミングがずれた為と思われ申し訳なく思った。

洋室に家具を置いた感じを確認できないのも

僕の中では少し心残りではあった。

 

別れ際

「もう、これで大丈夫やし、明日から治療に励むわ。

まぁもう頼むこともないやろう」

お施主様はすがすがしい笑顔で、竣工に満足されていた。

すがすがしすぎた感じに少し寂しさを感じた僕は

「まだ、廊下と便所、玄関が残っていますよ」

と冗談交じりに言い、あとにした。

 

半年ほどたった緊急事態宣言開けすぐの今年のある日、施主宅を訪ねた。

ご病気の経過も知りたかったし、部屋の様子も見たくて。

「おかげさんで数値も回復して・・・」

元気なご様子で、病院の書類を見ながら経過を説明頂き、僕も安堵した。

 

洋室は

窓際にベッドを置き

その横に思い出のミシン机を並べ

その上にパソコンを置かれていた。

椅子のクッションは愛用の物で

タイガースマーク入り。

 

部屋は計画通りに家具が置かれ

きれいに使われていた。

 

南窓からの光が、部屋をキラキラさせているように見えた。

これからの人生をより明るい方へ

後押ししてくれるようないい空気感だった。

 

 

 

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