苔庭と五・七・五(後編)
探訪2021.10.07(Thu)
(前回のつづきです)
嵐山お気に入りの場所、2つ目は『落柿舎』です。
庭に柿の木40本あり、その柿の実が一夜のうちに
ほとんど落ちつくしたことに因んで名づけられたそう。
かやぶき屋根の控えめな佇まいに魅かれて
ぶらっと寄ったのがきっかけで、
それからは、祇王寺の後に必ず寄ります。
松尾芭蕉の高弟、元禄の俳人向井去来の遺跡で
去来没後すたれますが、
芭蕉の全集を始めてまとめた五升庵蝶夢の門弟
井上重厚によって1770年に再建した後
代々の庵主人が守り続けてこられたもの
庵主人がいることを示す鑿と傘
冬場共と語らうための土間にあるニワイロリ
狭めのお勝手に対し
俳句を思案したり、本を読まれたであろう少し広めのザシキ
生涯を俳句に捧げた人物の価値観や
立ち寄った人々との交流する様を容易に想像でき、
暮らしに沿って建てられた家ならではの魅力を感じると
改めて、やはり「家は人なり」と思うのです。
微笑ましい簡素な暮らしぶりですが
随所に見える美意識の高さには目を見張ります。
外壁のホタル壁(錆壁)、
通風と防虫を兼ねた床下に建てた竹穂垣
◁ホタル壁(錆壁)
余計な空間や意匠を排除した草庵は
五・七・五の十七音という限られた文字数で世界を表現する
俳諧士ならではかと思います。
「俗」から「聖」を巡り、また「俗」へ戻った秋分の夕暮れ
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