暮らしの手入れ (続)住み続けるということは 今と未来を繋ぐこと
古民家リノベーション2023.12.19(Tue)
『ていねいな暮らし』と呼べるほど大げさなことではないけれど、
10年前にリノベーションした玄関戸のお手入れの1コマ。
年季の入った職人さんによって、
玄関戸が家の『シンボル』として味わい深く育ってゆく。
玄関という部分だけを考えると、アルミ製を選ぶ選択もあるけれど
建物の持つ歴史性や他の意匠との関係性、未来の愛着や風合いを考えて、
木製で製作することに決めた頃をなつかしく思い出した。
竣工当時、
訪れた保険屋さんは
「こんな立派な建具なら、もう少し良い保険に入れますよ」
と言ってくれたそう。
施主は、
「以前のアルミ製の引き違い戸と比べると、
夏場の玄関内の温度が全然違って、
だいぶ涼しくなったんです。
前はそれだけアルミが熱を伝えていたということですよね。
玄関戸の材質で、こんなに暮らしぶりも変わるのかと驚きました。」
と言ってくれた。
玄関戸は、地元産の桧で製作しました。
ガラスを割って、開錠されないように格子のピッチを5㎝角にしています。
自転車の出し入れの際、ガラスを割らないように両面格子にしています。
手入れとしては、長年溜まった汚れを薬品で洗い落とし、保護塗装を施します。
硝子面は小さく、格子が細かく入っているから、根気がいります。
また、大工さんには、
少し硬くなった『横猿』の調整(赤丸のところ)頂いています。
『猿』とは戸締り用の鍵の事です。
扉ごと上げて、泥棒に外されるのを防ぐために付けています。
作業中、興味深く見ながら通り過ぎていく人も何名かいらっしゃいました。
『新品の時が最高で、ダメになったら、買い替える』風潮が
未だ強い世の中で、珍しい光景だったのかもしれません。
木は、アルミ製に比べると、たしかに手は掛かるけど
未来に向けて、育ててゆく喜びを与えてくれる。
手に入れたものに手を掛けながら育ててゆくのも
家づくりの醍醐味の一つ。
新品の頃よりも味わいや愛着、共にすごした時間をのせて、
時代を超えていってほしい。
佐野泰彦建築研究所
HP https://yasuhiko-sano.com/
インスタ @yasuhiko_sano
*ご相談は、ホームページで受付けています。
作品:住み続けるということは 今と未来をつなぐこと↓
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住み続けるということは 今と未来を繋ぐこと(前編)
住み続けるということは 今と未来を繋ぐこと(後編)