慈しむ心(3)

現場から

2015.07.21(Tue)

(前回のつづきです)
「えっ・・・・えーっと・・・・・・・・・・・あの・・・・・・・・・
ご契約金額も変わりますし、助成金の手続き等色々変更しないと・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・でも、着工前にわかって、よかったです」
と現場監督さんもおっしゃって頂き、
その他の工事とあわせて、予定通り退院までに竣工しました。


その後、ご主人様が退院されたとお聞きしたので、立ち寄ると、


「お父さん、思ったよりも上手に手摺とか使ってくれてるねん!
トイレの手摺もこんな感じで使って、本当に良かった。
今日がデイサービスに行く初日で、元気に行ってくれてん!!
この感じやったら、もっと元気になってくれるかもしれないし、
次は・・・
」と笑顔でおっしゃられていました。


手摺ぐらい、高価なもんじゃないし
あかんかったら、またつけ直したらいいやんと
おっしゃられる方もいらっしゃるでしょう。


しかし、ある日突然、病気になって、今まで出来た事ができなった時、
身体より気持ちの回復が一番難しかったとお聞きしました。
そんなご主人様がやっと退院して、家での新しい暮らしを始める際、
便所の手摺が上手く使えなかったらどんな気分になるでしょう?


家族が自分の為に用意してくれた手摺なので、不具合を言えず、
無理に使って身体的に他に悪い部分がでるかもしれません。
もしかしたら、俺の事、わかってないと怒られるかもしれませんし、
俺、やっぱりダメかな?とふさぎこまれるかもしれません。
いずれにしても楽しみにしていた生活のスタートで躓かれてしまいます。


介護改修における本題は、手摺をつける事ではありません。
一つでも自分で出来る事を自分で行う環境をご用意する事で、
ご自身の人間としての尊厳を保ち、
ご家族とより楽しい時間を過ごして頂く事だと思います。


窓上まで伸びた手摺は、けっして見栄えのするものではありませんが、
「私、ちゃんとお父さんの事、見ているからね!」という
奥様の溢れんばかりの愛情の現れと共に
ご家族みなさんの新しい生活を支えてくれています。