復元するということは 遠い過去と近い未来を繋ぐこと(後編)
京町家リノベーション2016.04.12(Tue)
前回の続きです
そこで、建物の持つ魅力やお施主様の思い出を整理しながら、
より良い継承を模索しました。
時には、行政や有識者の方々を交え協議し、
「現在よりも耐震性を高めながら、建物を復原し、次世代に託す」
という案に辿り着きました。
幸い建築当時のご記憶や写真も数枚残っておりましたので、
当時の姿を思い起こすのは容易でしたが、
2階に付いていたと言われる格子の意匠がはっきりしません。
頼りのお施主様も
「竪格子があったのは、覚えてるんやけど、横桟はあったかどうか・・・」
といった感じで、類例も調べましたが、お聞きしたような例もありません。
そこで当時の主人の気持ちになって、
家の中を改めて見ると・・・
竪格子に横桟を2本通す意匠を多用されていたので、
「この方なら、横桟を2本通したに違いない」と仮定し工事を進めました。
取り付けられていたアルミサッシを外すと・・・、
当時の敷居・鴨居から、竪格子のホゾ穴と
柱からは2本の横桟のホゾ穴が見つかりました。
その時は、御記憶や予想が当たった喜びよりも、
当時の主人の想いに繋がったという
なんとも言えない気持が大きく、
「これで自信を持って、次世代にバトンを繋げる」と安堵しました。