思いの行方(前編)

現場から

2017.04.18(Tue)

思いを形にするのが、僕の仕事です。

検討や図面を書くことと同じぐらい大切なこととして、

お施主様の思いを聞き、整理することがあります。

 

打ち合わせの中で、お聞きした思いについては検討しますので、

重要度や長所・短所についてお互いに理解も深まりますが、

時々、ご自身で判断し、思いを押し殺す方がいらっしゃいます。

 

こんなこと言っても無理

こんなこと言ったら馬鹿にされる

こんなこと言っても・・・

 

押し殺された思いは、

そのままじっとはしていません。

 

もしかしたら、工事中や竣工後、

言っておけばよかった。

言っておいたらどうなっていただろう

疑い、後悔、時には怒りに変貌し、世の中に現れることもあるでしょう。

 

あるお店の便所の改修の相談を受けました。

便器については、A社、B社を中心に6種類ぐらいを一緒に検討し、

ご予算と機能面よりB社で決定していました。

 

最終打ち合わせの時のことです。

あと1週間で着工のわりに

どうも自分の心の中がすっきりせず、

これでいいといういつもの手ごたえも感じません。

 

すると、

うちの便器は、B社だけど、周りのお店はA社ばっかりなんです。

B社ってアフターメンテナンスとか大丈夫?

詰まりやすくない?

みんながA社だからA社のほうがいいんじゃない?

言葉の端々にB社への不信感がにじみ出ています。

 

まだA社に変えることも出来る旨を説明しながら、

ご不安に感じられている点について11つ返答しますが、

どうも何かがおかしいことだけは、わかります。

 

着工前で、ちょっと不安になっているだけなんです・・・

 

お聞きするも

なにかが心にひっかかりながら、

その日はあとにしました。(つづく)

 

 

 

 

#佐野泰彦建築研究所