茶の心(後編)

探訪

2018.03.20(Tue)

 

(前回のつづきです)

受付を済ませ、導かれるように奥の方へ進む。

襖の向こうの世界に期待を膨らませながら

そーろと襖を開けると、

座敷、庭、そして庭の向こうにある景色が広がっていた。

一気に胸の鼓動が早くなり、

大きな声を出したくなるぐらいの感動。

 

「どうぞお好きなようにおくつろぎください」

と言われんばかりに

座敷をぐるぐる廻りながら眺めた後、

縁に出て遠くの景色に目をやりながら、ぼーっとする。

次に庭へ出て、飛び石を歩き、

白砂の大地と青い空との間に身を置き、天を仰ぐ。

 

心がほぐされていくのを感じる。

 

書院の奥にある2つのお茶室をじっくり拝見した後、

廊下沿いにある腰掛で休憩していると、

小鳥の声、風で揺れる木々の声、

ここで働く人々の笑い声が、遠くの方から聞こえてくる。

 

ここ、何時間でも居れる。

 

最後に庭を見ながらお抹茶を頂く。

女性の方が運んでこられるのを合図に正座をし

「作法とか知らないんですけど・・」と言うと、

「どうぞ楽になさっていただいて、お好きなように召し上がってください」

と言われ、すぐに足を崩す。

 

松を見ながら一口頂く。

少し熱めのお抹茶。

一口ずつ頂くたびに心が徐々に落ち着いていくのがわかる。

日常で付いた心の垢が取れていき

もともとの無垢な自分に戻るような自然体の心持ち

 

これがお茶というものかと感心する。

 

客人を思い、考え抜かれた末に辿り着いた簡素な造りの空間と一服のお茶が、

もともとの清らかさと安心感を思い出させてくれた。

 

 

 

 

 

#佐野泰彦建築研究所