故きを温ねて (前編)
京町家リノベーション2018.09.04(Tue)
閑静な住宅地に建つ大正期の京町家をリノベーションしました。
お施主様は、お母様とご夫婦、二人のお子様です。
初めてお会いした時、
「家づくりって本当に難しいですよね・・
以前お話しした方は、床の間を壊してそこにお風呂を作って、
今ある水廻りには畳を敷いて、庭を眺めましょう!
外観の格子も古臭いから、アルミサッシにして・・・って言われて。
代々住んできたお家のことをそんな風に言われて、お母さんも怒るし・・・
でも、もう一人、お聞きした人にも同じようなことを言われて、
とにかくガラッと変えましょうって。
プロの方が言ってるし、そういうものなのかなぁと思っても、
いまいちピンとこなくて・・・
どうするのが正しいのかわからなくなった時に
近所のUさん家を思い出して、紹介してもらったわけなんです。」
奥様は、自身の気持ちを整理するように
淡々と今までの経緯をお話ししてくれました。
「この子らが引き継いでいく家やから、
私は口出しするつもりはないんですけど・・でもねえ・・・
まぁ若い子達に任せてますから。」
お母さまは一言付け加え、離れのお部屋に戻られました。
表構えより、大正後期か昭和初期の町家であることは一目瞭然で、
細部に至るこだわりをみると、それなりの方が建てたと容易に想像できます。
内部は、生活しやすいように改装されている部分もありましたが、
火袋や座敷、床構えは建てられた当時の趣が残っていました。
「どうして、ガラッと変えましょうとなるのかは僕にはわかりかねますが
京町家をさわるときは、どんな良さがあるかをまず掴まれた方がいいですよ。
そして、建物の持つ由緒や特徴を理解した上でどうするかを考えます。
それは、自分たちがこういう暮らしを送りたいという希望を大事にしながら、
この町家をいかによりよく活かすかということです。
やみくもにその時の流行を追いかけてガラッと変えた後に
本来持つ良さに気づいても遅いですから。」
自分が気づいたこの町家の魅力を1つずつお話しする中で、
まずは、住み慣れて気づかない良さを再確認頂きました。
そして、その良さを残しながら、
不便に思われている点等 現代生活に合わせて改装するのをお勧めすると、
「そんなことが本当にできるんですか!出来るんなら、その方がいいかも。
お母さんも納得してくれると思うし・・・」
奥様のお話途中にご主人様が帰宅されました。(つづく)