故きを温ねて(中編)

京町家リノベーション

2018.09.11(Tue)

 

(前回のつづきです)

ご主人様がお昼休憩に戻ってこられました。

ご挨拶をした後、奥様から今までの話をご説明頂く中、

所々補足説明していると、自身の鼓動が少し早くなっているのに気づきました。

それは、ご主人への緊張感よりは、

もし、「ガラッと変えたいんですけど」って言われたら、

自分はどうするんだろう・・・

もちろんガラッと変える事ができないわけではありませんが、

引き受けるべきなのか、この場でお断りすべきなのか・・・

自身の心に問いかけていると、

 

「そらぁ、良いところを残して、直すやり方の方が絶対いいと思う。

もともとうちのおじいさんは、○○で仕事していて、ここに移ってきたんです。

そういうこととか、忘れたくない事もこの家にはいろいろあるし。

僕は、はじめからそういうやり方がいいって思っていた!」

ご主人様がおっしゃると奥様は、

「それなら、そうとなんで今まで言ってくれへんかったん()

 

僕は、計画の方向性に安堵し、

ご夫婦の仲睦まじい会話の行方を見守っていると

「家のことは奥さんに任せていますし、僕はなんでもいいんで、

奥さんの気に入るような家にしてあげて下さい。」

ご主人様に頼まれました。

 

帰り道、今日の話を振り返ると、

お母様とご主人様の言動が気になりました。

初対面で言いたいことが言えないというよりは、

僕とお会いするまでに

いろいろな話し合いがあった結果なのかもしれません。

お母さま、ご主人様が遠慮することなく、

希望や気になることを気軽に話して頂ける空気感が、

まずは必要なのでしょう

そして、各々の考えに〇×をつけるのではなく、

それらを超えた答えに導き、

同じような心持ちで

新しい暮らしを迎えて頂けたらと思いました。(つづく)

 

 

 

 

#佐野泰彦建築研究所