憩いの場

story

2019.10.09(Wed)

 

京都市内の閑静な住宅地で、離れの新築工事を行いました。

 

お仕事を依頼いただいた時
「家族にとって憩いの場と呼べる場所が欲しいんです。
 家族で真剣に取り組んでいる卓球が出来て、
 喫茶店を営む母が友人と談笑やカラオケが出来て、時には町内の寄り合いに使ったり・・・
 これは数年来の家族の夢なんです!!」
ご主人様はしっかり私の目を見て、熱く語られていました。
母屋は明治期に建てられた京町家で、その奥にある敷地の残りを利用して建てる計画でした。
しかし、卓球が出来て談笑が出来るだけでは、竣工後数年もすれば、物置になるかもしれません。
数年来のご家族の夢に相応しい憩いとは、どう在るべきなのか
いろいろな案や可能性をお話しながら、ご家族と共に検討を重ねました。
辿り着いたのは、ここでしか味わえない空気感。
それは、学校や職場でイヤなことがあっても、ここに来れば少し気分が晴れたり、
家族、友人との楽しい時間、時には一人で自分自身と向き合う静かな時間を過ごす。
日常の様々な出来事で生じる感情や想いを全て包み込み
離れを出る頃に活力として投げ返してくれるような。
高さが必要な卓球のサーブ練習から、様々な人間の行為を包み込んでくれるような勾配天井と
ご家族に癒しと落ち着きを与える開口部のほとんどない壁でシンプルな空間構成にしました。
そして、北側空地に向かって一息つきたい時に天を仰げるよう大きな窓を1つ開けました。
しかし、竣工後、空間に身を置いてもどうもしっくりきません。
ぴんと来ないというか、これでいいはずなんだけど、何かが足りません・・・
その数日後、オーダーメイドでオリンピック仕様の卓球台を
施主様、工務店さんと一緒に汗だくになりながら、運び入れました。
卓球台を予定の場所に配置し、ネットが張られた瞬間、空間の空気感がビシッと決まり
そう、やはりこれでよかったんだとようやく安堵出来ました。

 

 

 

 

 

 

 

#佐野泰彦建築研究所