マーシュとルビー

日々の暮らしの中で

2020.09.15(Tue)

 

商店街を歩いていると

グレープフルーツが安売りされていて、衝動買いする。

黄色いやつではなく、ルビーと呼ばれるオレンジ色をした皮の方を。

 

なんとなくルビーの方が酸味を抑えられ、

少し甘みもあり、つい手が伸びる。

4等分にして、夏みかんを食べる要領で食べるのだが

酸味のきついやつにあたると、少しつらい。

 

幼い頃は、必ず黄色い方だった。

2等分されたグレープフルーツの上に

母親に砂糖をかけてもらい

銀色で細長い柄の少し先のとがった特別なスプーンで

房の中の実をほじるように食べる。

 

スイカやみかんとは違い

食べ方に上品さがあり

子供ながらに「これが食後のデザートというものか」

少し贅沢な雰囲気を楽しんでいたのを思い出す。

 

「砂糖をかけてたのって、ぼくの家だけかなぁ」

ぼそぼそっと自信なさげな声で訊くと

 

「わたしのとこもそうだったよ。そのままだと酸っぱいし

 同じようなスプーンで食べてたよ」

笑顔で奥さんが言った。

 

 

 

 

 

#佐野泰彦建築研究所