求めていたものは 中編

セカンドライフ

2020.10.13(Tue)

 

(前回のつづきです)

お話を聞き終えた後、少し気まずい沈黙がありました。

「どう在るべきなのだろう・・・

どういう方向に進むのがより良い未来に繋がるのだろう」思いを巡らし、

「今回は形にならなくても仕方がない」と決心した上で、

 

「階段をそのまま利用したとして多少減額できたとしても、

いずれにしても大金がかかることには変わりません・・・・

ご主人様のひざの状態も良いとは言えませんし、

おそらく出来上がって2年もしないうちに後悔されると思います。

ここまで来て、この案が形にならないのはつらいですが・・・

末永く喜んでいただけないのなら、

いっそ工事をしない方がいいんじゃないでしょうか・・・

それか延期して費用を貯めるのも一案だと思います。・・・・」

 

誰よりもこのいえを楽しみにしているご家族に

少し厳しいことを言ってしまいました・・・

 

「じゃぁどうすれば・・・」と奥様に聞かれ

今までの案をベースに進み、

できたらいいけど、そこまでこだわらない点を見直しながら

金額を下げていくことをご提案し、その日の打ち合わせを終えました。

 

帰り際、ご家族はいつものように

僕が一つ目の角を曲がるまで見送ってくれました。

ご予算内に金額を下げられる確証は、その時勿論ありませんでしたが、

「夕日越しに見たお施主様の気持ちに応えないと!」2つ目の覚悟を決めました。(つづく)

 

 

 

 

#佐野泰彦建築研究所