Border Line (後編)

自分らしい暮らし

2021.08.19(Thu)

 

(前回の続きです)

 

敷地は北側と東側を道路に面しています。

北面の高さ2Mある閉鎖的な塀に対して

東面は塀で囲うのをやめ、

鹿よけの柵を建てることだけの開放的な雰囲気にし、

開放性と閉鎖性を面で使い分けました。

 

(北面の塀)

 

(東面の塀)

 

ただ、そのままでは

それぞれの面のつながりが生まれませんので

北側の塀に窓を開け、

閉鎖的な塀に窓の開放性を内在させました。

また東面で柵に使った鉄製のフラットバーを

1つの窓に通すことで

視覚的にもつながりを持たせました。

 

(北面塀窓 窓下端付近に

 東面で使用しているフラットバーを通しています)

 

塀に開けた窓は大小3種類で

サイズや形状を北外壁面で使われた窓に合わせ

建物との調和を試みています。

 

玄関のピッキングや待ち伏防止、

お気に入りの真鍮製玄関灯を置き

勝手口から新鮮な空気を取り入れ

庭に広がりを持たせ、

住人には遠くの山々を借景に

道行く人には窓からの1つの景色として楽しんで頂く

といった様々な役割を窓は担っています。

 

(玄関廻りの窓)

 

 

もともとは美観的にみせたくない勝手口を隠したい

という思いから始まった塀の計画ですが

 

周辺から閉ざして確保する一定量の解放感ではおさえきれない

元気なご家族の「気」をより遠くまで運び

「ここまでがわたしたち」を

「あの山の麓まで私たち」へと

より大きな解放感を得る一つの手段へと変化しました。

 

それは、ご家族の人柄を示す外構に

自然となりました。

 

開放性と閉鎖性

両極にある二つの力で手に入れた解放感を味わうのは

住人だけではありません。

 

道行く人の中には、

庭いじりをしているご夫婦に話しかけてくる人もいるそうで

山の中で見知らぬ人同士挨拶するような感覚が

ポッと胸の内に生まれるのかもしれません。

 

初夏には、道路向かいの水田より

小さくてかわいいアマガエル達が

自然豊かな庭に移住してきたそうで

「お隣は玄関とか窓に虫コナーズを掛けているけど

うちには、ほとんど蚊が来ないんです。

カエルたちのおかげかなぁ」

とご夫婦は笑って話してくれた。

 

 

 

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