はじまりのとき
僕は京都市下京区で生まれ育ち、大学を卒業するまで実家で暮らしていました。
実家は狭小京町家で、1階2間2階2間、風呂はなく銭湯に通っていました。
祖母、両親、3兄妹の計6人で住んでいましたから、幼い頃は兄弟げんかもしょっちゅうでした。
プライバシーもなかったし、けっして快適ではなかったけど、実家に愛着はあります。
今の家族の絆もこの環境だったから築かれたと思うと、この家で育って良かったと今は思います。
設計する時に、オープンな空間や家族の気配を繋ぎたいと思うのもこの経験があったからだと思います。
20歳の頃安藤忠雄さんの展覧会を見て、雷に打たれたような衝撃を受けました。
「建築家こそ自分の目指すところだ」と思い、いろんな人に夢を語りました。
3回生からインテリアコーデイネーターの夜間コースに2年通い、自分なりに努力もしました。
しかしながら、「僕は文系だから、きっと建築家は無理なんだろうなぁ」
と諦めている別の自分も心の中にいました。
「せめて同じ業界の仕事に」と考え、
ハウスメーカーの営業に就いたのが、僕の家づくり人生のはじまりでした。