my hometown

ご夫婦とこども達のための住宅である。敷地は左京区郊外にある新興住宅街の一画に位置する。
共に相談選定した敷地は、北側と東側の2方向道に面した台形で、東には比叡山、春には道路沿いの桜並木が映え、北には水田や山の稜線がきれいに見える自然豊かな恵まれた環境だった。

「子供が成人するまでの限られた時間を大切に過ごし、愛着のある実家を次世代へつなぐこと」が家づくりの主題で、恵まれた自然を享受し、プライバシーを確保しながらも、ひとつに結びあった生活を営めるような空間が求められた。

建物は7.2ｍ角の正方形平面に西寄りに水廻り棟を付け、北側に建てた背の高い目隠し塀で構成される。室内に招き入れる光の調整と広がり感のある庭をつくるために北側道路に対して約2度時計と反対方向に建物を振り、4方に趣の異なる庭が生まれた。北側高塀と道路との間に三角形の余白の敷地を花壇として道行く人の気持ちを和ませ、南には、西側より東の比叡山に向けて視界的な広がりを感じるリビングテラスが生まれた。西庭は駐車場・駐輪場といったサービスヤードとし、東庭は家庭菜園で、植物の根もとへの日当たりや道路向こうの桜並木や比叡山も敷地の一部であるようなつながりを持つために、木杭とフラットバーによる簡易な柵で仕切り、北側とは対照的な開放感のある庭とした。

屋内は、この土地ならではの自然の恵みを素直に受け取り、それぞれの空間に山からの風、朝日、山のある景色を届け、それらを吹き抜け、リビング階段、室内窓でつなぎ合わせ、家族の気配が風に乗って伝わるようにした。

この家が、ご家族の『故郷』へ育ってくれたらと願う。