Second Base (前編)

セカンドライフ

2022.09.08(Thu)

東山区で鉄骨ALC造3階てのリノベーションを行いました。

 

お施主様は建築地から徒歩10分程度の場所で持ち家にお住まいでしたが、

ご家族も多く、ご自身がダイニングで就寝するぐらいご自宅が手狭でした。

また、友人を招く部屋がない等考慮し、

中古物件を購入して、2拠点生活を送ることに決められました。

 

2拠点生活とは、

週末にもう一つの拠点に家族で移動して過ごすのではなく

家事に通い、寝るときに帰り、

友人が来るときは新しい家で会うといった

2つの拠点を行き来しながら日常生活を送るということです。

 

10分ほどとはいえ、

雨の日や風の強い日は面倒に感じることもあるでしょう。

家族間の距離感が変わった先に

今まで以上の幸せが待っているのだろうか

と心配する気持ちが僕に芽生えました。

 

築20年ほどのご自宅は、手狭であるものの、

劣化度合いも一般的なレベルで

すぐに手を入れないと!という状態ではありません。

「あと2,3年で息子さんが大学卒業することを考えたら

狭くても、けんかをしても一つ屋根の下で、

いままで通り共に暮らして、

家族構成が変わった頃に手を入れるぐらいが、

ちょうどいいんじゃないですか?」と尋ねました。

 

建物は1980年代に建てられた店舗併用住宅で、

1階で定食屋を営まれ、2,3階を

居住スペースとして使われていました。

建物は道路側間口2.5M、奥間口2.1M、奥行10.5Mの台形で、

東向きに建っていました。

その内、間口1Mほどは

1階から3階まで一直線に進む階段に占められていて、

階段には窓もなく、壁に囲まれて薄暗い雰囲気でした。

 

建物両隣は隙間なく建て込んでいましたが、

道路側の窓から奥の部屋への風の抜けは良く、

また3階からは東山の稜線が見え、

心が少し晴れやかな気分になりました。

 

私とお会いする前に、

お施主様はすでに3,4社から提案と見積を取られていました。

その資料を拝見しながら、

ご家族の希望をお聞きしていたのですが、

いまひとつピンとこないといったご様子でした。

また、法律的、物理的にも無理な計画も含まれており、

「これは厳しいですよ」とやんわり諭しながら、

 

お施主様が思い描いているイメージと

この空間が本当にマッチできるのだろうかと考えを巡らす中、

 

「今の状態のまま転売されても、

おそらくすぐに売れて損はしないんじゃないですか?」

とお尋ねしました。

 

 

しかしながら、

お施主様の覚悟に全く迷いはありませんでした。

 

(つづく)

 

 

ホームぺージ写真アップしました↓

#佐野泰彦建築研究所

インスタグラムにもアップしました↓

https://www.instagram.com/yasuhiko_sano/