無口なお父さん フラワーアレンジメントは語る (中編)
古民家リノベーション2023.03.17(Fri)
(前回のつづきです)
↑打ち合わせの頃の和室
お父さんは、息子さんを1人前の大人として
家づくりという大きな仕事を任せつつ、
人生の先輩として計画全般にぬかりなく気を配っていた。
息子さんは住人として、
これからの暮らしを考えることに夢中だった。
息子さんが、お父さんに内容を伝えないのは、
検討を重ねている途中だったのと
住人は自分自身という自負だろう。
もしかしたら、お父さんからアドバイスされると、
自身の至らなさを指摘されたように感じるのかもしれないな
と僕は自分と父との関係を重ね合わせて考えたこともあった。
ご家族全員と私の4人でお話する時は、
お父さんと息子さんの会話は少しぎくしゃくすることもあり、
両者の間に見えない壁のようなものを感じるときもあった。
「自分の好きなようにリノベしたい」と当初言っていた息子さんは、
打ち合わせを重ねるうちに、建物の良さを少しずつ理解された。
そして受け継ぐものとして、
ご両親の気持ちや建物に自然に寄り添うようになっていった。
ご自身の要望を我慢して諦めるというよりは、
一時的な欲望を満たすことよりも
少し先の未来にまで考えられるようになっていったのだろう。
ご予算的に余裕があっても、
「費用は両親に負担をかけるから、
極力無駄な出費は控えるようにしたい」
と工事内容と見積は何度も精査した。
そして、ご家族全員が納得できる計画案が出来上がった。
歴史的価値を活かしながら、現代生活をより快適にする
建物の新しい在り方だった。
それは、お会いしてから9か月が過ぎた暑い夏の頃だった。(つづく)
□○△
佐野泰彦建築研究所
京都市中京区壬生坊城町48-3-1-708
インスタ @yasuhiko_sano
*ご相談は、ホームページで受付けています。