ある画家の別荘(後編)

古民家リノベーション

2022.12.01(Thu)

(前回のつづきです)

 

歴史的由緒のある建物を検討する時に

気をつけていることは、

未来には

今とは異なる価値観が

きっと生まれていると思うし、

現在の要望に合わせすぎず、

やるべきことを行うぐらいに

留めるよう心掛けている。

 

野球で例えると、

この機会に1発ホームランを狙うんじゃなくて、

時代ごとにヒットを積み重ねる

「つなぐ野球」の姿勢が

大事じゃないかなと思う。

 

それには、

現存している建物の特徴を見抜き、

どの部分を残すか、後世に伝えるかの

選択が大切になる。

 

極力少ない変更で、

暮らしぶりを向上させることはできないかと

検討を重ねて思いついたのは、

部屋の空間構成、主要な柱の位置はそのままで

部屋ごとの用途、水廻りの並びを変えた。

 

「初めて来られた人にとって、

元々そうであったかのように」を目指して、

部屋ごとの関係性、動線を整理した。

 

浴室部分を玄関にして、

屋内で靴を脱げるようにし、

中廊下と玄関ホールを繋ぎ、

直接光だけでなく、風も取り入れた。

 

取次の間は、キッチンとし、

居間と隣接させた。

 

浴室は、以前台所の位置へ移動させた。

 

南面に面した個室はそのままで、

修繕工事のみにとどめた。

 

ご子息は、今回の改修で

さらに60年の寿命が建物に与えられることも

期待されていた。

もともとの土壁を活かし、

将来でも手に入れやすい自然素材を使い、

メンテンナンスしやすいよう配慮した。

 

奥様によると、

竣工後、以前住まわれていたご家族が訪れて、

自分達が暮らしていた頃の面影が

色濃く残っている部分と

新しくなった部分との調和した様に

「上手く活かしている」とお褒めを頂いたらしい。

 

コロナ禍の困難な時代であるが、

元気に住み続け、後世へ伝え続けて頂けたらと願う。

 

 

玄関               中廊下

 

 

取次の間 着工前         取次の間 竣工後

 

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