my hometown

左京区にある閑静な住宅街で新築を設計しました。

ご要望は「子供が成人するまでの限られた時間を大切に過ごし、子供たちに愛着のある『実家』を残してあげたい」でした。お施主様からは、敷地の選定からご相談頂き、ご家族と一緒に自転車で候補地を巡りました。ご相談頂いてから約7か月後、東には比叡山、春には道路沿いの桜並木が映え、北には水田や山の稜線がきれいに見える自然豊かなご家族のライフスタイルにふさわしい敷地が見つかりました。お施主様は、「ガーデニングを楽しむことや森のそばに在る木々越しに見える我が家」を希望されていましたので、まずガーデニングに使う範囲や方位を決めました。その上で、建物は、この土地ならではの自然の恵みを素直に受け取ることを心掛けました。大地からの恵みを頂く菜園のそばに、キッチン・ダイニング・食品庫を配しました。採れた野菜をキッチンで洗い、調理してダイニングへ出す。そして生野菜のゴミは、庭にあるコンポストへと庭と食を回遊する動線をつくりました。また、山から吹き下ろす風の通り道として、北から南、東から西、1階から2階、部屋同士の中をも通り抜ける風の道をつくりました。風は季節の到来を教えるだけでなく「今、あのあたりに誰がいて、なんとなくこんなことしているのかな」といった家族同士の気配をも届けてくれます。それぞれの気配を感じる生活は、時には不都合に感じる時もあるでしょうが、目には見えない安心感を日々与えてくれます。

お子様が巣立たれる日は、そう遠くありません。ふとした時に実家の事を思いだしたり、

今の暮らしを懐かしむ『心の支えとなる場所』へと、この家が育ってくれることを願います。