佐野泰彦建築研究所は、住宅・京町家・店舗の設計を手掛ける一級建築士の設計事務所です。
Works 作品
京都市左京区・リノベーション
設計~現場打ち合わせ期間:4か月
知恩寺の手作り市で「無料住宅相談」をしていた時に、お施主様とお知り合いになりました。
「未経験だけど、ワインバーをやりたいんです」という女性店主の思いは強く感じました。
はじめての経験に立ち会えることは貴重な経験で、その方の人生に1度きりの経験をお手伝いさせて頂くことになりました。「世界中の煮込み料理とワインとチーズ」というお店のコンセプトにふさわしい空間として、お施主様からは『洞窟の中のような雰囲気』を希望されました。それは、落ち着きのある明るすぎない空間で、例えばろうそくの明かりで食べ物を分かち合い、感謝をささげる食事のイメージが私に湧きました。その空間には、静けさと心の拠り所となるシンボルが必要だと考えました。壁と天井は同じ素材で吹付け、包み込むような空間としました。こころに落ち着きをもたらすものとして、カウンターの水平面と2階床を支える柱の垂直性を大切な要素として考えました。直線は人間が生み出した自然界にはないものです。食事という人間の営みに神聖さを付け加える要素になると考えました。もともとのカウンターに長さ1Mほどさらに継ぎ足し、より水平線を強調して、空間に静けさをもたらしました。そして、今回、新しさを加えた証として延ばした部分を白く塗りました。あらわしにする柱は、2階の床を支えるという物理的な役割だけでなく、森の木々が重力に抗って上へ伸びてゆく生命力を感じさせ、気持ちを高揚させます。柱の柱脚は劣化していましたので、添え柱で補強しました。元々の柱は無くしても構造上問題なかったのですが、名残として残しました。2階の床を支えるという役割を終え、これからは、訪れた人々のこころの『より代』になるよう願いを込めて赤く塗りました。
アシュクルク http://www.ash-k.com/