過ぎたるは猶及ばざるが如し
過ぎたるは猶及ばざるが如し
過ぎたるは猶及ばざるが如し
過ぎたるは猶及ばざるが如し

着工前

過ぎたるは猶及ばざるが如し

京都市下京区・京町家リノベーション
設計~現場打ち合わせ期間:3か月

京都市下京区の閑静な住宅地で、京町家のリノベーションを行いました。

それは、お母様を看取られたお部屋の相談でした。そのお部屋は大正後期か昭和初期に建てられたであろう京町家のミセにあたる部屋で、伝統的な意匠として大和天井や出格子も現存しており、材料の質やサイズ感から当時の繁栄ぶりが容易に伺えました。ご要望は、「ガラッと一新して、床をフローリング張り、壁や天井はクロス張りにして明るくしたい」とのことでしたが、何事もなかったかのように新しく全てを覆い隠すというよりも、いつの間にか溜まった生活感を落し、本来ある魅力に磨きをかける方が望ましいと私は考えました。しかしながら建築当時に囚われすぎると、施主の考えと大差ありません。 悲しみの縁からの新たな1歩を踏み出すには、現代性や施主の好みを適度に取り入れた中庸的な姿勢が大事だと考えました。

そこで、北窓の採光を遮る棚を取り外し、壁には明るめの珪藻土を塗り、反射光で空間を明るくすることにしました。また、玄関からの床高が高く、出入りしにくいとお聞きしていたので、足触りの良い吉野杉で式台を設けました。踏面は、杢目の美しさと時を刻みながら少しずつ変わっていく様を楽しんで頂けるよう無色で仕上げました。 竣工時お施主様にはご満足頂けましたが、これで本当に良かったのかと自問することもありました。 その後、お友達とのお茶会等少しずつご利用いただけている旨をお聞きし、ようやく安堵しました。